目が覚めると、外はまだ群青色の世界だった。
出張先のホテルは海に面した高層階の部屋で、窓からはリーフらしき海岸線とその海岸線に沿って走る道が見える。
おそらくこの辺りはサーフポイントなのだろう。
昨日の夕方、夕日にきらめく水面にいくつかのサーファーらしき影が見えていた。
「仕事じゃなかったら真っ先にポイントを見に行くのにな。」と少しふてくされた気分になってしまう。
窓際のソファーに腰掛け、濃い目に入れたコーヒーを口に含む。
群青色の景色を背景に、スタンドの光が鮮やかなオレンジ色になってガラスに映り、窓には幻想的な世界が出来上がっている。
ステレオからはJoeのThe Love Sceneが流れていた。
久しぶりに聞くお気に入りの曲に心が和んだ。
出張先で早く起きすぎてしまった朝は何をすればいいのだろうか。
会議用の資料に目を通す?
色彩が織り成す極上の景色を目の前にして、それは余りに場違いじゃないだろうか。
都合のいい解釈をして、そのままソファーにくつろいでいることにした。
資料に目を通すのは移動の車の中でもできる。
もう後、30分もすれば空も明るくなり、群青色の世界は現実味を帯びた本来の色彩の世界となるだろう。
つかの間の逃避行だ。
海が見える景色とコーヒーと音楽。
今、この時間がものすごく大切なものに思えてならない。
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